あらゆる情報は性質を持ちますが、
快不快の判断は性質に対してだけでなく、
その性質の別の性質に対する快不快の判断も行われて記憶され、
状況において有益を取得・危険を回避する上で有効となる性質を活用しようとします。
つまり、有益的条件に特定の性質が組み込まれている場合、その性質を求めるようになります。
この仕組みを便宜上「利用的思考」と呼びます。
わかりやすく言えば、人間も含めてすべての生物には人間的な概念である「善悪」「常識」などの制限は存在せず、
目的(利益確保・危険回避)達成の為には
環境、物、生物、他個体など、あらゆるものを利用することを含め、
自身がとれる最善策を行おうとします。
生物の思考(持情報合理的結論)にルールはなく、他社の利用も含めてこれまでの自身の経験からの最善策を行おうとします。
持情報合理的結論による認識的合理的行動 = より合理的に利益を追求した結果として行う行動
自身以外の何かが持つ性質や特性を利用しようとすることを「持情報合理的結論」における「利用的思考」と呼びます。
たとえば、チンパンジーは他のチンパンジーに食料やメスをとられないようにグループを作って食料のあるエリアをなわばりとします。
この時、人間的な考えではグループのメンバーは「仲間」という概念になりますが、
実際には人間の仲間のイメージである「仲間=無償で助け合う相手(メリットなしでコストとリスクを受ける)」は存在せず、
「グループ=自分の為に利用する相手(別の個体を利用することで自身の利益を高めようとしたりコストやリスクを下げようとしたりしている)」だけになります。
人間も含めて全ての生物に「仲間(無償で助け合う相手)」は存在せず、あくまでも利用にあたります。
なお、人間が「善悪」や「常識」に基づく判断を行うのは、
これまでの人生で善悪や常識という概念を取得し、
それに則ることが自分にとって有効(もしくは則らないことで被害を受ける)と考えているからであり、
「善悪」や「常識」に基づく行動は食事の様式の違いと同じで
取得した情報によって変化した経験的条件によるものになります。
(だから個体によって善悪や常識の概念=基準は異なる)
利用的行動
全ての生き物は自分が生き延び子孫を残す為に、
自身以外の何かの特性を利用することがあります。
たとえば、物の特性の利用の一例として、
ヤドカリは身を守るために貝を利用します。
ラッコは貝類やウニ類を食べる為に石を利用します。
リスは巣穴として樹洞を利用します。
ワニは鳥をおびき寄せる為に枝を利用します。
チンパンジーは寝床を作る為に木や葉を利用します。
擬態は天敵や獲物から見つかりにくいようにする為に周囲の物や植物・動物の特性を利用していると言えます。
・補足説明:利用的行動の差異(認識的合理的思考の認識範囲) 「同様の性質を持つもの(同様に利用できるもの)」で「同様に利用できると認識できるもの」であれば、一般的に認識されている代表物(上記のもの)でなくてもかまわない たとえば、ヤドカリは身を守るために貝を利用するが、貝に求める特性を持つものであれば貝でなくてもかまわない ただし、認識できるものでなければ、それが利用できると理解することができない たとえば、ヤドカリの場合、大きさや形的に住まいの代わりになると認識することができ、かつその性質を持っているものであれば何でもよく、 逆に認識できない大きさや形、また住まいとしての性質を持たないものであれば利用しない(することができない) |
同種族の特性の利用の一例として、
スズメは大量のエサを見つけた際に外敵から襲われるリスクを下げる為に他のスズメを呼び寄せます。(他のスズメを利用する)
(自分の分しかない場合は他のスズメにとられる恐れがある為、他のスズメは呼ばない)
ペンギンは危険を察知する為に他のペンギンについていきます。(他のペンギンを利用する)
ゴリラのメスは捕食者に襲われる危険性を下げる為にオスのゴリラと行動を共にします。(オスのゴリラを利用する)
ダチョウは別のダチョウに自分の卵を育てさせます。(他のダチョウを利用する)
他種族の特性の利用の一例として、
一部の花は受粉の為に虫に花粉を運んでもらいます。(虫を利用する)
クマノミはイソギンチャクを隠れ蓑にします。(イソギンチャクを利用する)
ニセゴイシウツボはホンソメワケベラやアカシマシラヒゲエビに寄生虫の掃除をさせます。(別種の魚やエビを利用する)
カッコウはオオヨシキリなどに子育てさせます。(別種の鳥を利用する)
トゲアリはクロオオアリやムネアカオオアリの働きアリに働かせます。(別のアリの利用)
ツバメは自分のヒナが敵に襲われにくいように人間の家屋に巣を作ります。(人間を利用する)
動物の赤ちゃんは近くの動物を保護者として利用しようとします。
(補足として、アブラムシは天敵から守ってもらう為にアリに甘露を提供しているという説が一般的ですが、これは誤りです。
実際にはアブラムシはアリに食べられないように甘露を出しています、アリはアブラムシの甘露を守るために敵から守っています。
つまり、助け合っているのではなく、利用し合っているのです。
その為、アブラムシが甘露を提供しなかったり甘露に甘みが無くなればアリはアブラムシを捕食します)
人間の利用的行動
この性質は人間にも備わっていて、
目的(利益確保・危険回避)達成の為には
環境、物、生物、他個体など、あらゆるものを利用することを含め、
自身が考えうる最適解な行動を行おうとします。
たとえば、赤ちゃんがミルクを手に入れる上での最適解な行動は
母親に用意させる(母親を利用する)ということであり、
そのために「泣く」という行動を起こして母親に空腹を知らせようとします。
また、赤ちゃんが生き延びる可能性を高める上で母親(の労力)を独占することが重要になる為、
次の子供を産ませないように夜中に「泣く」ことで両親の生殖行為を妨害しようとしたりします。
つまり、赤ちゃんが生き延びる可能性を高めるためには母親をフル活用することが有効であり、
赤ちゃんはあらゆる手段を用いて母親を独占(確保)及び利用しようとするのです。
人間の利用的行動の一例
暑い日には日陰に入ろうとする ⇒ 日陰(の特性)を利用
食中毒を防ぐために火を使って食材を加熱する ⇒ 火(熱)を利用
川を越える時は橋を渡る ⇒ 橋を利用
他人に手伝いを頼む ⇒ 他人を利用
料理をお皿に入れる ⇒ お皿を利用
テレビを見る ⇒ テレビを利用
友達にゲームを借りる ⇒ 友達を利用
人についていく(後側に居る人) ⇒ 危険から身を守るために前の人を利用
飲食店を経営する ⇒ 他人の食欲や金銭を利用
他人とコラボする ⇒ 他人の能力や影響力を利用
ブランド品や高級車を手に入れることですごいと思われようとする ⇒ ブランド品や高級車の利用
イケメン(美女)と付き合ってすごいと思われようとする ⇒ イケメン(美女)の利用
女性が男性にデート代を出させようとする ⇒ 自分の利益やリスク低減の為に男性を利用
男性が女性と性交しようとする ⇒ 自分の快感や生殖の為に女性を利用
利用的思考の発生
特定の利益が得られる、もしくは特定の危険を回避したいと感じた際に(有益的条件、危険的条件)、
その利益を取得したい、もしくはその危険を回避したいという欲求が発生しますが(有益取得欲求、危険回避欲求)、
完全な独力で目的を達成しようとするよりも環境や他者の特性を利用した方がより目的を達成しやすかったりコストやリスクを抑えやすくなることが多い為、
他者や環境を利用しようとするかたちになりやすくなります。(利用的思考)
たとえば、お腹が空いた時に近くに母親がいる場合、
「自分で作ろう(調達しよう)」と思うよりも「母親にご飯を作って欲しい」と感じやすいですが、
これは「母親に用意してもらう方が楽」「自分で作るよりも美味しい」「タダで食べられる」など、
自分で用意するよりもメリットが大きかったりコストやリスクが抑えられるからになります。
たとえば、お金が欲しいと思っていて近くにお金持ちがいる場合、
「自分で仕事をして稼ごう」と思うよりも「お金持ちがお金をくれたらいい」と感じやすいでしょう。
たとえば、危険から守って欲しいと思っていて近くに強い者がいる場合、
「危険は自力でどうにかしよう」と思うよりも「危険は強い者が守ってくれたらいい」と感じやすいでしょう。
有益的条件による利用的思考の発生
利用的思考は上記例のような一時的なものだけでなく、
赤ちゃんにおける母親の存在のように常時的なものも含め、
特定の利益が得られる、もしくは特定の危険を回避したい場合のあらゆるケースにおいて発生する可能性があります。
たとえば、「相手に○○してほしい」「相手が居ると助かる」「相手と居ると楽しい」「相手と一緒に居たい」「相手に好かれたい」などは全て利用的思考になります。(相手を利用することで快感が得られると推測)
また、「他人が自分の言うことを聞いてくれたらいい」「自分の都合の良いように動いてくれたらいい」「自分を守ってくれたらいい」「自分に貢いでくれたらいい」「他人が自分に対して協力的であったらいい」などと感じることや、
「他人に好かれたい」「他人に必要とされたい」「他人に尊敬されたい」「他人に認められたい」などと感じることなども全て他人の特性が組み込まれた有益的条件による利用的思考になります。
利用的思考の一例
- みんなが欲しがっている物を手に入れてすごいと思われたいと思う
- 学校で良い点数をとってクラスのみんなから尊敬されたいと思う
- 大手の会社に属したいと感じる
- 有名人になりたいと感じる
- SNSでいいねやフォロワーを増やしたいと思う
利用的行動に伴う「有益的条件:リターン(メリット)」と「危険的条件:コストとリスク」とのバランス
生物は自身が有利になることがすべてであり、
そのためにあらゆるものを利用しようとしますが、
この際にコストやリスクが発生する場合、
リターン(メリット)がコストやリスクを上回ると感じる場合は利用を行おうとし、
リターン(メリット)がコストやリスクが以下と感じる場合は利用しようと感じません。(持情報合理的結論)
たとえば、お腹が空いた時に近くに母親がいる場合、
「自分で用意しよう」と思うよりも「母親にご飯を作って欲しい」と感じやすいですが、
「自分で用意するよりも母親に用意してもらう方が難しい」「母親が作ると不味くて食べたくない」「作ってもらうのに高いお金がかかる」などの場合は母親に用意してもらおうとは思いません。
利用的行動の決定要因: 「母親に用意してもらうメリット - 自分で用意するメリット」 - 「母親に用意してもらうコストやリスク - 自分で用意するコストやリスク」 ⇒ プラスの場合は母親に用意してもらおうとし、マイナスの場合は自分で用意しようとする |
他の例としては、電車に乗って座席が空いていればそこに座ろうとします(席を利用しようとする)が、
電車に乗って座席が埋まっている場合には座っている人に「席を譲って」とお願いはしません。(他人や席を利用しようとしない)
これは「お願いしても断られる可能性が高い⇒お願いする労力や時間の無駄(コスト)」や「周囲の人間に悪い目で見られる恐れが発生する(リスク)」などと感じているからになります。
たとえば、自分が脚を骨折していて、二人席に1人だけが座っていてもう1つの座席にはその人の荷物が置かれている場合、
「声をかけるコストやリスク※」に対し
「自分が骨折していることによる体力的な辛さ」
「骨折していることの大義名分(相手の反感に勝てる、周囲の人間に悪い目で見られる恐れがない)」
「常識的(荷物で座席1つを占領するのはよくない)な大義名分(相手の反感に勝てる、周囲の人間に悪い目で見られる恐れがない)」などが勝る場合は
「すみませんが、そこいいですか?」と声をかける可能性が発生します。
(※声をかけるコストやリスクは当人や相手にもよる。男性よりも女性の方がリスクが高くなる為、女性の方が他人に対して声をかけにくくなる。また、コワモテな男性の場合はリスクが高くなる為、相手がコワモテな男性ほど声をかけにくくなる)
たとえば、男性なら美女と性交したい(子供を産ませたい)と感じますが、
1回の性交で必ず子供が生まれその子供を自分一人で育てないといけないという場合は性交したいとは思いません。
性交する場合: 1回だけ性交できる(+20) + 子育てする(ー1000)
性交しない場合: 性交しない(ー20)
⇒ 性交しないを選択する
現実で性交しようと思うのは、リスクを認識していない(自分が子育てするとは思っていない)からになります。
利用的思考の仕組み
利用的思考の基本的な構図 ①相手がこちらと「○する」ことで「利益・危険の回避」になる ⇒ 相手はこちらと「○する」 相手がこちらに「○する」ことで「利益・危険の回避」になる ⇒ 相手はこちらに「○する」 ②相手がこちらと「○する」ことで「危険・利益の喪失」にならない ⇒ 相手はこちらと「○する」可能性がある 相手がこちらに「○する」ことで「危険・利益の喪失」にならない ⇒ 相手はこちらに「○する」可能性がある ③相手がこちらと「○する」ことで「危険・利益の喪失」になる ⇒ 相手はこちらと「○しない」ようになる 相手がこちらに「○する」ことで「危険・利益の喪失」になる ⇒ 相手はこちらに「○しない」ようになる ④相手がこちらと「○する」ことで「利益・危険の回避」にならない ⇒ 相手はこちらと「○しない」可能性がある 相手がこちらに「○する」ことで「利益・危険の回避」にならない ⇒ 相手はこちらに「○しない」可能性がある ⑤相手がこちらと「○しない」ことで「利益・危険の回避」になる ⇒ 相手はこちらと「○しない」ようになる 相手がこちらに「○しない」ことで「利益・危険の回避」になる ⇒ 相手はこちらに「○しない」ようになる ⑥相手がこちらと「○しない」ことで「危険・利益の喪失」にならない ⇒ 相手はこちらと「○しない」可能性がある 相手がこちらに「○しない」ことで「危険・利益の喪失」にならない ⇒ 相手はこちらに「○しない」可能性がある ⑦相手がこちらと「○しない」ことで「危険・利益の喪失」になる ⇒ 相手はこちらと「○する」ようになる 相手がこちらに「○しない」ことで「危険・利益の喪失」になる ⇒ 相手はこちらに「○する」ようになる ⑧相手がこちらと「○しない」ことで「利益・危険の回避」にならない ⇒ 相手はこちらと「○する」可能性がある 相手がこちらに「○しない」ことで「利益・危険の回避」にならない ⇒ 相手はこちらに「○する」可能性がある |
たとえば、
相手がこちらと「○:会う」することで「利益:幸せ」なら、相手はこちらと「○:会う」ようになり、
相手がこちらと「○:デート」することで「危険:時間が無駄」なら、相手はこちらと「○:デート」しないようになります。
相手がこちらと「○:会う」することで「危険の回避:寂しさを解消できる」なら、相手はこちらと「○:会う」ようになり、
相手がこちらと「○:デート」することで「利益の喪失:見たい番組が見れなくなる」なら、相手はこちらと「○:デート」しないようになります。
利益(メリット)に対する危険(コストやリスク)とのバランスによる最終的な利用の有無
①~⑧の要素の比較によって思考と行動が決まります。
たとえば、「①こちらと会うことで楽しい場所に連れて行ってもらえる」「③こちらと会話することで否定されて嫌な気持ちになる」が発生する場合、
「①>③」ならば会い、「①<③」ならば会わなくなります。
持情報合理的結論による利用的模索
相手を利用することが得策と感じた場合、基本的には相手の意思等に関係なく自分勝手に利用しようとします①が、
直接的な方法では利用することができない場合、利用できる方法を模索し行動します②
①前者の相手の意思を無視する例として、
アリは力尽くでアブラムシから甘露を奪おうとし、
カッコウは他の鳥に勝手に托卵します。
②後者の利用できる方法を模索し行動する例として、
アブラムシはアリに守ってもらう為に甘露を出し、
花は虫に花粉を運んでもらう為に蜜を出します。
動物の赤ちゃんは守ってもらう為に弱さをアピールし、
ゴリラのメスはゴリラのオスに守ってもらう為にセッ○スアピールします。(性交を見返りとして守ってもらおうとする)
身近な例で言えば、犬は飼い主(特定の人間)から定期的にエサがもらえるようになった後、特定の時間にもらえない場合、
飼い主の目を見つめる、吠える、その場で回るなどを行うことでエサが欲しいということをアピールします。
これは人間にも当てはまり、相手を一方的に利用することができない場合は利用できる方法を模索し行動します。
これを「利用的模索」と言います。
たとえば、子供が母親にお菓子を買ってもらいたいとき、(強制することはできないため)
お願いしてみたり、泣きわめいたり、勝手に買い物かごに入れたりします。
たとえば、おじいちゃんが孫に好かれたい場合、(強制することはできないため)
お菓子をあげたり、おこずかいをあげたり、面白そうな話をしたりして気を引こう(好かれよう)とします。
利用的模索による行動の一例
命令(強制)する、泣く、怒る、暴れる
お願いする
嘘を吐く、ごまかそうとする、すり替える
交換条件を出す
優しくする、物を与える
誘導する
など