認識的合理的行動


全ての生物は自己の生存と子孫を残すことが最も重要であり、

その為の行動を自身の経験を踏まえて最も合理的に起こそうとします。

この際、人間的な概念である「善悪」「常識」などの思考ルール(制限)は人間を含めて持っておらず、

あらゆる生物は目的(利益確保・危険回避)達成の為に環境、物、生物、他個体などあらゆる物を利用することを含め、

自身がとれる最善策を行おうとします。

この行動の原理を便宜上「持情報合理的結論」と言い、この行動を便宜上「認識的合理的行動」と言います。


たとえば、赤ちゃんには空腹になると泣きますが、

「泣く」ことによって空腹を解決できる場合は泣く以外の行動を行う必要はありません。(つまり感情も必要ない)

赤ちゃん:空腹→泣く ⇒ 母親:赤ちゃんが泣くのを聴く→ミルクを飲ませる ⇒ 赤ちゃんのエネルギー不足が解決


しかしながら、「泣く」ことによって空腹を解決できない場合は解決する為の他の手段(行動)が必要になります。

赤ちゃん:空腹→泣く ⇒ 母親:赤ちゃんが泣くのを聴く→無視(ミルクを与えない) ⇒ 赤ちゃん:エネルギー不足が解決されない→別の行動で解決する(ミルクを入手する)必要がある


この際、「泣く」を繰り返しても条件が解決されないため、別の行動を起こす必要があります。

赤ちゃん:空腹→泣く ⇒ ミルクが入手できない ⇒ 赤ちゃん:泣く ⇒ ミルクが入手できない ⇒ 赤ちゃん:泣いてもミルクは入手できないので入手する為の別の行動が必要


赤ちゃんの場合、「(普通に)泣く」以外の方法で解決を試みることになりますが、

赤ちゃんは運動情報(発言や歩行)がない為、

自分が持っている情報である「泣く(続ける、止める、より大きく、より小さく)」「手足を動かす」などから最適と思われる行動を行います。(認識的合理的行動)

赤ちゃん:泣く ⇒ 母親:反応なし ⇒ 赤ちゃん:(母親に気付かれる為に)泣き声を大きくする


同様に、子供や大人の場合も入手した情報が条件に当てはまった場合=解決すべき事案が発生した場合は関連付けられた動作を起こしますが、それによって解決されない場合は感情が発生して解決方法を推測して行動を起こします。

たとえば、エネルギー不足を示す情報を取得すれば「空腹(不快)」の感情が発生し、空腹が解決されるまでは解決の為の行動を起こそうとします。

子供:空腹(不快)→母親を呼ぶ(ことで食べ物を用意してもらおうとする) ⇒ 母親:いない ⇒ 子供:食べ物を探すなど別の行動で空腹を解決しようとする



仕組み

「行動」はこれまでに得た情報から
目的(条件の解決)を達成するにあたって
最適な結果を出す方法=関連する情報に関連付けられた快不快を参照して最も快感を得られる&不快を避けることができる組み合わせ
を推測して実行される


もう少しわかりやすく言えば、

解決的行動はその時点で自身がとれる行動の中で最適だと感じている行動を行っていると言えます。

最適な方法の推測を「持情報合理的結論」、その実行を「認識的合理的行動」と呼びます。


たとえば、赤ちゃんがミルクが欲しくなって泣くのは、

「泣く」という行動がその時にできる行動の中で最も効果的であると認識しているからになります。

赤ちゃんができる行動の一例とミルクを得られる可能性の一例

 ・泣く ⇒ ミルクを入手できる可能性がある
 ・静かにする ⇒ ミルクを入手することは難しい
 ・手を動かす ⇒ ミルクを入手することは難しい
 ・脚を動かす ⇒ ミルクを入手することは難しい


赤ちゃんのうちは持っている情報が少なく身体も未熟なためできることが限られていますが、

情報を取得し成長するにつれてやり方が変化していきます。

たとえば、赤ちゃんは空腹になれば泣くという行動で母親に知らせようとしますが、

ある程度大きくなったら母親に「お腹空いた」などの言葉で知らせようとする場合もあれば、

自分で食べられるものを探して食べようとする場合もあります。

空腹になった時の行動の変化の一例

 ・赤ちゃん:泣く
 ・幼児:食べられそうなものを口に入れる
 ・子供:母親を呼ぶ、冷蔵庫を開ける
 ・大人:料理を作る、買い物に行く、外食に行く


成長するにつれて後者のように行動が変化していきますが、

それには新たに取得した「①方法に関する情報」とその情報に関連付けられた「②感情情報」が関係すると考えられます。



①方法に関する情報について


行動は『これまでに得た情報』から
目的(条件の解決)を達成するにあたって
最適な結果を出す方法=関連する情報に関連付けられた快不快を参照して最も快感を得られる&不快を避けることができる組み合わせ
を推測して実行される
その為、行動の方法は個体が過去に得た情報によって大きく異なる(行動様式)



たとえば、魚をとる方法を親が釣りをしている姿を見て釣りを知っていて、なおかつそれ以外の手段を知らない子供は釣りで魚を確保しようとします。

  • 釣りしか知らない ⇒ 釣りで獲ろうとする
  • 網ですくうしか知らない ⇒ 網で獲ろうとする
  • 罠で捕らえるしか知らない ⇒ 罠で捕ろうとする


たとえば、食事をする方法を親から箸の使い方を学んでそれ以外の手段を知らない子供は箸で食事をしようとします。

  • 箸以外の食事方法を知らない ⇒ 箸で食べようとする
  • ナイフフォーク以外の食事方法を知らない ⇒ ナイフフォークで食べようとする
  • 手以外の食事方法を知らない ⇒ 手で食べようとする


たとえば、嫌なことがあった場合に親がイライラして犯人や責任を追及しようとする姿を見ていてそれが適切だと感じた子供は嫌なことがあった時はイライラして犯人や責任を追及しようとします。

  • 犯人や責任を追及しようとする方法以外を知らず、またこの方法が最適だと感じる ⇒ イライラしながら犯人や責任を追及しようとする
  • 原因は自分にもあると考えて人に怒らずに話し合って解決しようとする方法以外を知らず、またこの方法が最適だと感じる ⇒ 原因は自分にもあると考えて人に怒らずに話し合って解決しようとする


以上のことから、自分がより良い方法を知るには外部から新しい情報を取り入れる必要があります。

また、他人が実行している方法を見て「あの方法は良くない」と感じる場合、それはその人がそれ以外に良い方法を知らないということなので、その人の方法を他の方法に変えたいのであれば、その人にそれ以上に良い方法があるということを知らしてあげればよいということです。


※余談ですが、行動様式の材料となる情報は親以外にも兄弟、祖父母、いとこ、友達、学校の先生、テレビなど、様々な情報が材料となりますが、行動様式の基礎部分が作られる幼少期に得られる情報の大半は親からの情報になる為、人間の行動様式は親からの情報に最も影響を受けていることになります。



②感情情報について


行動はこれまでに得た情報から
目的(条件の解決)を達成するにあたって
最適な結果を出す方法=『関連する情報に関連付けられた快不快』を参照して最も快感を得られる&不快を避けることができる組み合わせ
を推測して実行される


つまり、何らかの行動を起こした際、

  • A①情報に快感が関連付けされた場合:こういう行動を起こしたことで「良い思いをした(と感じた)」場合
  • A②情報に不快解消が関連付けされた場合:こういう行動を起こしたことで「結果的に悪い思いを回避できた(と感じた)」場合

は、同様の行動パターンをしやすくなり、


得られた情報からの推測(関連付けられた情報の参照)によって

  • A③快感が関連付けされている情報を参照したことで快感が想起される場合:こういう行動を起こすことで「良い思いができる(と感じた)」場合
  • A④不快解消が関連付けされている情報を参照したことで不快解消が想起される場合:こういう行動を起こすことで「悪い思いを回避できる(と感じた)」場合

は、同様の行動パターンを起こしやすくなり、


何らかの行動を起こした際、

  • B①情報に快感解消が関連付けされた場合:こういう行動を起こしたことで「良い思いをできなかった(と感じた)」場合
  • B②情報に不快が関連付けされた場合:こういう行動を起こしたことで「悪い思いをした(と感じた)」場合

は、同様の行動パターンを回避しやすくなり、


得られた情報からの推測(関連付けられた情報の参照)によって

  • B③快感解消が関連付けされている情報を参照したことで快感解消が想起される場合:こういう行動を起こすことで「良い思いをできない(と感じた)」場合
  • B④不快が関連付けされている情報を参照したことで不快が想起される場合:こういう行動を起こすことで「悪い思いをする(と感じた)」場合

は、その行動パターンを回避しやすくなると考えられます。


・行動(情報)と感情の関連付けによる行動の起こしやすさの変化

 A①: 行動a × 快感 ⇒ 行動aを起こしやすくなる
 A②: 行動b × 不快の回避 ⇒ 行動bを起こしやすくなる
 A③: 行動c × 快感 ⇒ 行動cを起こしやすくなる
 A④: 行動d × 不快の回避 ⇒ 行動dを起こしやすくなる
 B①: 行動e × 快感の回避 ⇒ 行動eを起こしにくくなる
 B②: 行動f × 不快 ⇒ 行動fを起こしにくくなる
 B③: 行動g × 快感の回避 ⇒ 行動gを起こしにくくなる
 B④: 行動h × 不快 ⇒ 行動hを起こしにくくなる


たとえば、釣りをして魚が獲れれば釣りをしやすくなり、

釣りをして魚が獲れなければ釣りをしなくなります。

  • 釣りをして魚が獲れる:釣りと快感の関連付け ⇒ 釣りをしやすくなる:快感と関連付けられた釣りを実行しやすくなる
  • 釣りをして魚が獲れない:釣りと不快の関連付け ⇒ 釣りをしにくくなる:不快と関連付けられた釣りを実行しにくくなる

身近な例で言えば、勉強をして褒められれば勉強をしやすくなり、

牡蠣を食べてお腹を壊した場合は牡蠣を食べにくくなります。


方法を複数知っていても最適な結果を出す方法のみが実行される例として、

魚をとる方法を「釣り」「網」「罠」の3つの方法を知っていたとしても、

釣りではよく獲れて、網や罠ではほとんど捕れたことがなければ、釣りを実行しやすくなります。

  • 釣りでよく獲れた:釣りと快感の関連付け ⇒ 釣りをより実行しようとする
  • 網ではあまり捕れなかった:網と不快の関連付け ⇒ 網はあまり実行しようとしない
  • 罠ではあまり捕れなかった:罠と不快の関連付け ⇒ 罠はあまり実行しようとしない

⇒ 三つのうち最も良い結果を出せそうな「釣り」を実行しやすくなる


また、魚を実際に獲ったことが無く、

人から「釣りならよく獲れる」「網はほとんど捕れない」「罠はほとんど捕れない」と聞いていた場合、

釣りを実行しようとしやすくなります。

  • 釣りではよく獲れると聞く:釣りと快感の関連付け ⇒ 釣りを実行しようとする
  • 網ではあまり捕れないと聞く:網と不快の関連付け ⇒ 網は実行しようとしない
  • 罠ではあまり捕れないと聞く:罠と不快の関連付け ⇒ 罠は実行しようとしない

⇒ 三つのうち最も良い結果を出せそうな「釣り」を実行する


※補足として、より正確には、他に取得する情報(その時の環境や状況など)も判断材料になるため、現実では上記のように単純に決まるわけではないことに留意



取得した情報(過去の経験)から最も良いと推測できる方法(最適解)を実行する(認識的合理的行動)例として、

たとえば、「初対面の人に積極的に話しかける人」がいますが、

それはこれまでの経験から人に積極的に話しかけることが「良い結果に繋がる」もしくは「悪い結果を回避できる」と感じているからであり、

「積極的に話しかける」がその人にとっての最適解(認識的合理的行動)になります。


同様に、他人にあまり話しかけない人は、

これまでの経験から他人とはあまり関わらない方が「良い結果に繋がる」もしくは「悪い結果を回避できる」と感じているからであり、

「他人にあまり話しかけない」がその人にとっての最適解(認識的合理的行動)になります。



補足説明:行動の決定について

行動(認識的合理的行動)は「条件を解決(目的を達成)するにあたって自身が持つ情報の中から最適な方法を実行する」のであって

「他人の言うことをそのまま実行する」というわけではありません。


たとえば親が「○○しなさい」と言えば子供はそう行動する(それが子供の認識的合理的行動になる)というわけではありませんし、

「○○しちゃダメ」と言えば子供はそれをしなくなる(それが行動様式になる)わけではありません。


「○○しなさい」や「○○しちゃダメ」はあくまで1つの情報であり、これによって行動源となる感情が発生し、

目的(たとえば不快の解消)を達成する為に自身が考えうる最も最適な行動を推測し(持情報合理的結論)、実行します。(認識的合理的行動)


その為、たとえば目的の達成(不快の解消)方法が「親の言うことを聞く(ことで不快を解消しようとする)」や「○○する(ことで不快を解消しようとする)」になれば、

「親の言うことを聞く」や「○○する」になりますが、

目的の達成(不快の解消)方法が「○○したと思わせる(ことで不快を解消しようとする)」「やりすごす(ことで不快を解消しようとする)」「忘れさせる(ことで不快を解消しようとする)」「逃げる(ことで不快を解消しようとする)」になれば、

「○○するフリをする」「○○したと嘘をつく」「今は忙しいから後ですると言う」「話をそらそうとする」「家出する」など、

それに対する最適解(と感じる方法)を実行しようとします。